2017年12月08日
今年もそろそろ、年末調整の季節がやってきます。先日、このようなご相談がありました。
Q「主人と扶養控除の話をしていて、主婦の場合パート収入が103万円以下ならば、なぜ所得税がかからないんだろうという話題になりました。どうしてでしょうか?」
A そうですね、この問題も「男と女の税務」ということになりますかね。
「奥様は年間所得が38万円以下なら、自分自身で基礎控除を使って、さらにご主人の配偶者控除を受けることができます。
所得税がかからないのですが、算式としては、103-65=38ということで、給与収入の必要経費的控除の最低限度額を65万円と所得税法で定めているからなのです。パート勤めの主婦も所得税の世界では、サラリーマンと同じ給与所得者に区分されます。」
との回答でご理解いただけるでしょうか。
※この場合の配偶者とは、女性からみたら男性を、男性からみたら女性をいいます。
年末調整とは、給与収入が一定金額以下の給与所得者(大部分のサラリーマン)が対象となります。
毎月源泉徴収される所得税は前払いの税金と考えることができるので、年末調整では、その人の1年間の給与所得に対する年税額を計算して、その年税額と前払いした所得税との過不足を精算する事務作業を行います。
その事務作業が年末調整と呼ばれます。
でも、サラリーマンが、1年分の領収書を会社に持参するという話は聞いたことがないですよね。
実は、年末調整では、領収書を持参しなくてもいいように、実額経費控除ではなく概算経費控除を使って、年税額の計算をするように税法が出来上がっています。この概算経費控除のことを「給与所得控除」といいます。
パート収入103万円を有する奥様でも給与所得控除の金額は65万円、税込給与収入500万円のサラリーマンでも約150万円が給与所得控除という必要経費的控除として控除されて、さらに基礎控除や社会保険料控除そのほかの控除がなされます。
平成の時代に入ってもしばらくは、税理士事務所でも税務署で配布される3枚カーボンの源泉徴収票(所得税と住民税とに使用できるもの)を使用していました。そのなかの受給者交付用の用紙の裏には「給与所得控除は必要経費的要素を持つ」と、ちゃんと説明印刷されていました。
テレビの報道番組で、「サラリーマンには経費がない」などとトンチンカンなことを言う経済アナリストもいますが、現在は、実額経費ではなく給与所得控除という概算経費で、しかも、1年間に実額で出費するであろう金額よりもはるかに多い金額を控除されて、所得税や住民税が計算されているということをご理解いただけると幸いです。
- わかりづらいですが、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が給与所得の金額を意味します。サラリーマンにとっては、「給与経費控除後の金額」若しくは「概算経費控除後の金額」と表現した方がわかりやすいかもしれませんね。
- サラリーマンの必要経費や給与所得控除の性質についての代表的な裁判例としては、大島訴訟 (最高裁昭和60年3月27日大法廷) 判決があります。
- ご参考までに、少し古いですが平成7年分源泉徴収票を掲載しますので、ご覧いただきたいと思います。「必要経費的な要素を持つ」との記載があります(3枚又は4枚カーボンの現物なので、裏が映って見づらいことはご了承くださいませ。)。