2018年07月02日
信用保証料の性質については、学説には一時の費用的な説もありますが、税務においては、従来から繰延経理すべきとの考え方があります。㋐前払費用説と㋑繰延資産説の二つです。
今のところ裁判所も国税不服審判所も前払費用説を採用し、繰延べ経理することとしていますが、その理由付けは、未だ成熟の余地があるようです。
だからこそ、インターネットででてくる全国の実務家の皆さんの理由付けの説明もバラバラであるように思います。
平成17年名古屋高裁判決及び平成19年国税不服審判所裁決から学んだことは?
① 信用保証料は繰延べ経理すべきで、法人税の計算上は、一時の費用として損金算入してはいけない。いま仮に、前払費用だと考えるなら、損金算入方法は債務確定主義によるべきではないでしょうか。
② 月数按分は法人税法別段の定めである繰延資産の損金算入限度額の計算方法である。信用保証料を前払費用だと考えるなら、月数按分してよいのでしょうか。
今後の裁決事例等で解決してほしい点
- 法人税法施行令でわざわざ前払費用の定義づけをしているのですから、前払費用の概念を企業会計から借用する必要はあるのでしょうか?すなわち、法人税法22条4項を持ち出す必要があるのでしょうか?
債務確定主義及び別段の定めを論理展開して、法人税法の規定だけで判断できるのではないでしょうか? - 判断においては次のことを前提にすべきでは?
① 信用保証料の会社への返戻は平成6年度からであること。
② ①は、会社の中途全額完済を理由に、信用保険料が返還されるようになったことが原因であること
③ 中途一部返済では、信用保証料が返金されない
- また、平成19年に国税不服審判所が判断した計算方法は、契約書にはでてこないもの。
そして、契約書以外で手渡される書類に記載されるものでもない。ゆえに、審判所の判断は、債務確定主義の射程を超えたものではないかという懸念が残ります。(法人税法上何が正しいかを考えるよりも、税務上も会計実務上の前払費用と考える先入観が優先していないでしょうか?税務の現場では租税法を勉強する前に会計を勉強する業界人が多いことや、信用保証料を実際に支払った経験がある税務担当者が少ないことが原因かもしれない)。
- 債務確定主義で計算ができない(解決不能)なら、その射程を超えることなく、法人税法の別段の定めである繰延資産による損金算入も検討すべきある。
- 最高裁第三小法廷平成28年1月12日判決は「信用保証協会は信用保証を行うことを業とする法人である」ことを判示しました。信用保証料支払いにより提供を受ける役務、すなわち、信用の保証とはどんなものでしょうか?
代位弁済をしてもらう会社と、代位弁済してもらわない会社双方の役務提供対価は同額(最初に支払う信用保証料のみ)でよいのでしょうか?提供される役務が異なるのに、同額で良いと考える根拠は?
法人税法22条3項の債務確定主義によりその事業年度に損金算入すべき金額が契約によって不明確であるなら、信用保証料を支払って融資実行された段階で金融の円滑化が図られ、役務の提供は終了し、融資を受けている期間にわたってその効果が及ぶと考えることもできるのではないでしょうか?
- 金子宏東京大学名誉教授が著書において、支払い火災保険料を繰延資産であると示されており、そのこととの関連性も熟慮すべきではないでしょうか。
辻 君:『以上です。このあとどこに行くかは、次回のお楽しみ(笑)。』
和 泉:『長いことお疲れさま。えっ?「早く書けばよかったのに!」って?ん?みんなが待っていた?でも仮面の忍者赤影ほどカッコ良くないしね(笑)。』。
松本君:『松本です。和泉さんはきっと、仮面の忍者赤影のテーマ曲の歌詞(みんなが待ってた~♬)に掛けていますよ(笑)。』
今回のお話、一般の方々には少し詳しすぎて長かったですね。ごめんなさい。
- 続編(その②)を実際に読み終わった辻さんから、「あのあと、二人はまっすぐ帰ったの?」とのご質問がありました。お二人には、またの機会にビールを片手に登場してもらうことにしますね🍺。