2018年05月02日
私もそうですが、税務の現場では、租税法に先がけて会計学を勉強した人が多いようです。
そのためでしょうか、「信用保証料は、税務上も会計実務上の前払費用である」という先入観が蔓延しているように感じます。
そのことや信用保証協会に信用保証料を支払った経験が無い実務家が多いことも影響し、
①平成19年国税不服審判所裁決は、債務確定主義からの射程越えが懸念される判断をしてしまったのではないだろうか?
もしそうなら、
②納税者に残される処理方法は、平成17年の名古屋高裁判決が示した月数按分の損金算入方法だけではないだろうか…?
との思いが募ります。
いま仮に、月数按分処理をするなら、法人税法から考える信用保証料の税務上の仕訳と勘定科目は、次のようになるでしょう。
1.支払時
(借 方) 長期前払費用 ××× (貸 方) 現 金 預金 ×××
※前払費用としての長期前払費用ではなく、税法上の繰延資産を会計実務では長期前払費用と表示することによるもの。
2.支払い事業年度以降の事業年度
(借 方) 繰延資産償却 ××× (貸 方) 長期前払費用 ×××
※繰延資産償却は法人の明確な意思表示が求められ、償却費として損金経理することが必要。金額は租税法規定の月数按分による。
3.借入金を中途全額完済し、信用保証料の返戻を受けた場合
(借 方) 現 金 預金 ××× (貸 方) 雑 収 入 ×××
(借 方) 繰延資産償却 ××× (貸 方) 長期前払費用 ×××
※参考:アコードタックスレヴュー 第3号 2013 (一般社団法人アコード租税総合研究所)
「20万円未満の支払い信用保証料の税務上の取扱いで悩んでいる中小企業は多い。」と、背中を押して頂いた心強い天の声がありました。
また、「男と女の税務その⑦」を見た新婚ホヤホヤのT税理士から「和泉さんが信用保証料の税務上の取り扱いを、Webサイトに掲載するのはもったいない。無料だから。」というありがたい言葉も頂きました。
ただ、税理士は法律上の商人ではないこともあり、何が正しいのだろうという視点で考えています。
前編では、中小企業の皆様に信用保証協会に対して支払う信用保証料について、税務上考えられる仕訳や勘定科目に親しんでいただけると幸いです。
また、考え方を詳しく知りたい方や、税務の現場でご判断をされる立場の皆様には完結編までご覧いただき、熟慮して頂ければと思います。
それでは次回後編をお楽しみに。